公開日:2023年8月6日
太陽光発電投資によって売電収入を得ている方は日々の発電量を意識されていると思います。
今回はこの発電量についてと発電量を改善・向上させる方法について説明していきます。
太陽光発電において発電量は基本的な知識として既にご存じの方も多いと思いますが、改めて確認していきます。
目次
まず、発電量について簡単におさらいしていきます。
(パネルの種類(単結晶・多結晶等)やセルやモジュールの変換効率、その他用語等に関する説明は割愛させていただきます。)
発電量は次の式で求められます。
年間発電量(kWh/年)= 1日あたりの年平均日射量 × システム容量× 損失係数 × 365 ÷ 1
日射量とは太陽から受ける放射エネルギーの量のことで、単位は「kWh/㎡」です。
上記式では1日あたりなので単位は「kWh/㎡/日」になります。
システム容量とは設置した太陽光発電のシステム容量のことで、単位は「kW」です。
損失係数とは太陽光発電が発電する上で発生する損失のことです。
太陽光パネルの種類やパネルの汚れ、温度上昇等によって出力が損失します。
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は損失係数を0.73としていますが、発電事業者等が発電所建設前に作成する発電シミュレーションでは損失係数を0.85としているケースが多いようです。
上記式の「365」は年間の日数、「1」は標準状態における日射強度(kW/㎡)を表しています。
(1日の発電量は、「1日あたりの年平均日射量 × システム容量× 損失係数」で計算できます)
計算例:
年平均日射量4.13kWh/㎡/日の場所にシステム容量10kWの太陽光発電設備を設置、損失係数を0.73とした場合の年間発電量
4.13(kWh/㎡/日) × 10(kW) × 0.73 × 365(日) ÷ 1(kW/㎡) = 約11,004(kWh/年)
発電量を計算する式に「kW」と「kWh」の2つの単位が登場しています。
この2つの違いについて説明します。
・「kW」キロワットと読みます。
「kW」は電力の単位で、太陽光パネルの発電能力(出力)を表します。
・「kWh」はキロワットアワーと読みます。
「kWh」は電力量の単位で、発電量を表します。
10kWのシステムを6時間発電させた場合、10 × 6 = 60kWhの発電量となります。
発電量の計算式は単純化すると「日射量」 × 「システム容量」 × 「損失係数」となります。
それぞれの数値は大きければ大きいほど発電量が増加します。
本記事は既に太陽光発電所を保有されている方や稼働中の太陽光発電所を取得される方を主な対象にしていますので、「日射量」と「システム容量」は基本的に変更が難しいものとしていますのでご了承ください。
「損失係数」を大きくするということは損失(発電量が下がる要因)を減らすことになります。
(損失(発電ロス)が20%の場合は損失係数0.8、損失が30%の場合は損失係数0.7となります)
発電量が下がる要因としては主に次のようなものがあります。
太陽光発電は太陽の光をパネルで受けて発電するという仕組みです。
したがって、雨や曇りの日には発電量が減少してしまいます。
太陽光パネルは25度前後の気温で最も発電効率が良くなります。
気温が25度以上になってしまうと、発電効率が下がるため発電量が減少します。
日差しの強い夏は発電量が増えると思われがちです。
しかし、夏は気温も高くなるため太陽光パネルの温度が上昇して発電効率が悪くなってしまい、結果として発電量も落ちてしまいます。
一年の中で発電量が最も高くなるのは、気温がそれほど上昇せず日射量もそれなりにある春頃だと言われています。
太陽光パネルの表面に汚れがつくと、発電量が落ちます。
太陽光パネルの汚れとしては落ち葉や鳥の糞、粉塵や埃、花粉や黄砂などがあります。
太陽光パネルの部分的な汚れであっても、そのパネルだけでなく回路全体に影響して発電量が大幅に低下するので注意が必要です。
太陽光パネルの汚れと同様にパネルに影がかかると発電量が低下します。
影の影響についても汚れと同様にそのパネルだけでなく回路全体に影響が及び発電量が大幅に低下するので注意が必要です。
太陽光発電システムの法定耐用年数は17年となっています。ただし、太陽光パネルが17年で使えなくなるわけではありません。
太陽光パネルの寿命は20年から30年程度と言われています。全ての太陽光パネルが上記のような寿命となるわけではなく、パネルの種類やメーカーによって差が出ます(日本国内には40年近く発電している太陽光パネルもあります)。
太陽光パネルは設置当初と同じ発電能力が維持できるものではなく、徐々に発電量が減少(経年劣化)していきます。
太陽光パネルの経年劣化はパネルによって異なりますが、概ねNREL(米国・国立再生可能エネルギー研究所)が発表したデータによると、太陽光パネルの劣化率の中央値は年間約 0.5%となっています。劣化率 0.5%というのは、太陽光パネルの発電量が年間0.5%の割合で減少することを意味しています。
これは、20年目の太陽光パネルの発電量が1年目に比べて約90%の発電量となることを意味します。
NREL参考資料
https://www.nrel.gov/state-local-tribal/blog/posts/stat-faqs-part2-lifetime-of-pv-panels.html
https://www.nrel.gov/docs/fy15osti/65040.pdf
パワーコンディショナ(パワコン)の寿命は約10年から15年と言われています。
パワコンは太陽光パネルで発電した直流の電力を交流に変換するものです。
精密な電子機器であり、半導体等の部品が徐々に劣化していきます。
通常の使用による劣化以外に、高温や湿気に弱いなど設置されている場所の条件によっても劣化スピードが早まることがあります。
パワコンが劣化すると電力の変換効率が悪くなっていきます。
変換効率が悪くなるということは売電できる電力が少なくなるということになります。
なお、パワコンはエラーで停止したり突然故障が発生することも多いので、毎月(あるいは毎日)発電量をチェックすることが重要です。
発電ロスが発生する主な要因は上記の通りです。
天気や気温等は発電事業者がコントロールできませんが、太陽光パネルの汚れを落とすなど発電事業者が対処して発電量の改善を行うことができることもあります。
ここからは発電量の改善・向上のための方法について説明していきます。
多くの太陽光パネルには汚れが付きにくいようにパネル表面に加工が施されています。
雨や風によってほとんどの汚れは除去されます。
ただし、雨・風等で自然に除去されない汚れもあり、これが蓄積して太陽光パネルの発電能力が低下することがあります。
雨・風で自然に除去されなかった土・砂や落ち葉等の汚れは、太陽光パネルの清掃や洗浄を行うことで除去できます。
太陽光パネルの清掃・洗浄は自分自身行うこともできますが、太陽光パネルの表面を傷つけてしまうなどの恐れがあるため専門業者に依頼することが推奨されています。
(太陽光パネルに傷をつけてしまった場合、メーカー保証が受けられない可能性があります)
また、鳥のふんや太陽光発電所の近隣で行われている工事等が原因で太陽光パネルに付着したセメント・塗料等は通常の洗浄では除去しきれないことが多いため、専門業者に依頼することが望ましいです。
発電量の低下が発生した際、太陽光パネルやパワコンの機器に問題がなかった場合はパネルの汚れを確認することも必要です。
また、太陽光発電所の定期点検時にパネルに汚れがないか確認し、必要があればパネルの清掃・洗浄を行うことで発電量の低下を防ぐことができます。
花粉や黄砂が付着しやすい春先はパネル洗浄に適していません。
太陽光パネルの洗浄を行う時期として梅雨明け後が推奨されています。
これは梅雨の間は太陽光パネルについた汚れが雨によって流れ落ちるため、自然に落ちなかった汚れだけが残ることで、パネル洗浄のコストを抑えることができるからです。
影を作る原因をなくすことができれば影問題は解決しますが、原因をなくすことが困難なケースがほとんどです。
影の原因をなくすことが困難な理由としては、原因となっている木や建物が自分自身の所有物ではないことが大半だからです。
建物を撤去してもらうことはほぼ不可能ですし、木についても伐採を許可してもらえないこともあります。
このように影の原因をなくすことができない場合、どのように対処すればよいのでしょうか?
上述の通り、影がかかった場合はそのパネルだけでなく回路全体に影響が及んで発電量が大幅に低下します。
影がかかっているパネルだけでなく他にも影響が及ぶのはなぜでしょうか?
太陽光発電では、太陽光パネルを直列に繋いでいます。
複数の太陽光パネルを直列に繋げた単位を「ストリング」と言います。
直列に繋いだストリングを並列に組み合わせることで太陽光発電システムを構成しています。
影がかかるなどして1枚の太陽光パネルの発電量が低下すると、同じストリングの他の太陽光パネルの発電量も低下してしまいます。
影をなくすことができないのであれば、他のパネルへの影響を最小限に抑えることになります。
このためには、ストリングの一部が影の影響を受けて発電量が低下したとしても、他のストリングでは発電量が落ちないようにできます。
影のかかり方によって配線の組み換え方法が異なります。
横向きの配線を縦向きに変更するのが良いケースのほか、コの字やUの字等に複雑に配線していく方法もあります。
配線の組み換えには高いコストがかかる場合もあります。
したがって、発電量改善によって得られる利益と配線変更にかかるコストを比較する必要があります。
ストリングの組み換えが得になるのであればできるだけ早めに対応することをお勧めします。
本記事では発電量が落ちる原因と改善策等について解説しました。
弊社では「発電量調査サービス」を無料で実施しております。
もし下記のような心配・不安がある場合は遠慮なくご相談ください。
・シミュレーション値と比べて発電量が低い
・発電量は妥当なのか?
・最近発電量が落ちてきたような気がする
・パネルやパワコン等の故障の可能性はあるのか?
・太陽光発電所の売却を検討しており、売却価格を査定してほしい
この記事を書いた人:澤井 孝夫
株式会社バイタルフォース代表取締役